適応障害とは?向いてる仕事や、なりやすい人の特徴について解説
更新日:2024年06月17日
誰もが仕事をする上でストレスに適応しながら生活をしていますが、何がストレスとなるか、そしてストレスへの適応能力は人それぞれなのです。適応障害とは、社会生活をする上で特定のストレスの原因(ストレス因)に適応できず、さまざま+な症状を引き起こし生活に悪影響を与える精神疾患です。ここでは、適応障害とはどのような病気なのか、特に適応障害が仕事に与える影響や適応障害に悩む人に向いている仕事などについてご紹介していきます。
目次
適応障害とは
適応障害は最近、よく聞くようになった言葉ではありますが、実際、適応障害とはどういう疾患なのでしょうか。
精神疾患の定義や症状で参照されるアメリカ精神医学会の診断、統計のマニュアルの最新版であるDSM-5(2013)によると、適応障害は同マニュアルの第7群「心的外傷およびストレス因関連障害群」のグループに類別されています。
このグループは、よく知られている心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害や他のストレス性の精神疾患により形成されており、自ずと適応障害が何らかのストレスを原因とする精神疾患であることがわかります。
DSM₋5における適応障害の診断基準を見てみると、以下のようになります。
適応障害の診断基準(アメリカ精神医学会DSM‐5)
・ストレスの原因が明確であり、その原因となることが起きて3か月以内に症状が出現
・症状に以下のどちらか片方、または両方が含まれる ・他の精神疾患では説明がつかない ・その症状は通常の死別への反応では現れない ・ストレスの原因がなくなった場合、症状はそれから6か月以上は続かない |
うつ病との違い
適応障害で現れる症状はうつ病や不安障害などのそれと非常に似ています。うつ病との決定的な違いは、ストレスの原因が明確であること、そしてそのストレスが何らかの形で取り除かれれば症状は治まっていくことです。つまり、そのストレスの原因が仕事にあるとして、仕事を休むなどして症状が改善されるのであれば適応障害です。
うつ病の場合、ストレスの原因を除去しても症状が緩和しません。いわゆる”何をしていても、憂うつな状態”が継続します。また、適応障害とうつ病はこのように同様の症状を呈することもあり、症状や症状が出る期間などによって診断名が適応障害からうつ病や不安障害などに変わるケースも実際、多いようです。単純ではありませんが、ストレスの原因から遠ざかっても症状が改善されないうつ病の方がより深刻と言えます。
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適応障害の原因
適応障害の原因はストレスです。ストレスには外因的なものと内因的なものがあると言われています。
外因的ストレス
多くの人が想像するストレスは外因的ストレスです。外因的ストレスは外からの刺激に対しての緊張状態を指し、ストレスの原因も様々な種類があります。その多くは社会生活をする上で起こる環境変化や人間関係における葛藤です。仕事や学校、家庭や恋愛などはイメージしやすい外因的ストレスと言ってよいでしょう。被災経験や傷病なども外因的ストレスになり得ます。
内因的ストレス
外因的なストレスも何をストレスと感じるかは人によって様々です。他者にとっては非常に些細なことでも、ある人にとっては大きなストレスだったりします。同じ現象でもストレスと感じる人と感じない人がいるわけです。またはそれをストレスと感じたとしてもうまく対処できる人とできない人がいます。育った環境や性格によってストレスやその耐性が違うことを内因的なストレスの要素と捉えることができます。
適応障害は、原因となるこれらの外因的なストレスと内因的なストレスの各個人におけるバランスの問題ともいえるでしょう。
適応障害になりやすい人の特徴
適応障害になりやすい人の特徴として以下のものが挙げられます。
・ストレス耐性が低い
・神経質
・傷つきやすい
・カウンセラーや医師を含む他者への相談ができにくく、悩みを一人で抱え込む
・他人の目や評価が気になる
・真面目で責任感が強い
・自分より他人を優先してしまう
・気持ちの切り替えが苦手
・完璧主義で白黒をはっきりつけたがる
適応障害はそのストレスの原因となる事象が明確であることが特徴です。
外因的ストレスとなり得る事象はどこにでも存在します。外因的ストレスがその人にとってストレスとなり得るのは、それは人間関係や環境という自分だけでは解決できにくい何かだからです。発生したストレスが簡単に除去できるものなら適応障害には至りません。
職場でストレスの原因となることの多くは上司や同僚との人間関係です。また配属部署が変わったり、転勤になったりという環境の変化もありますが、そうした人間関係や環境も自分だけで改善できないストレスの原因なので、非常にストレスを感じる相手や環境を変えるという根本的なストレスの除去よりも、自分がそれを避ける方(職場に行かない、辞めるなど)が早いのが現実的です。
では、適応障害は外因的要素による、誰にでも起こる障害なのかというと、起こりやすい人、起こりにくい人というのはあります。それは個人、個人のストレスへの対処、適応能力の差と言えます。このようなストレスへの耐性の強さを”レジリエンス”と言います。
適応障害が仕事に与える影響
実際に適応障害になった場合の具体的な症状と仕事に与える影響について見てみましょう。症状は大きく、精神面、行動面、体調面の3つにわけることができます。
精神面の変化
まず精神面では、うつ病や不安障害に見られるような抑うつ状態、不安、怒り、焦り、緊張などが見られます。職場では上司や同僚とのコミュニケーションに変化が見られ、関係がスムーズに行かなくなる可能性が大きくなります。うつ病の象徴的症状でもある抑うつ状態では、いわゆる憂うつで、やる気が出ません。その人が普段、元気で活発でエネルギーに溢れているほど、適応障害になった時のギャップは大きいでしょう。
行動面の変化
このような精神面での変化は行動となって表れてきます。まず職場での業務遂行に積極的でなくなったり、注意力がなくなり今までしなかったようなミスを犯すことも見られるようになります。また人との関りでいえば、普段、とても温厚だったり、明るく人懐っこいような人が暴言を吐いたり、暴力的な行動を取ることも見受けられます。
症状が重度化すれば、そもそも職場に来ること自体が不安になり、欠勤が増えていきます。職場へ連絡すること、逆に職場からの連絡にも嫌悪感や緊張が伴うため、無断欠勤もよく見られます。こうなると電話やSNSによる連絡にも反応せず、コミュニケーションが困難となります。仕事とは直接関係ありませんが、自暴自棄になったり、暴飲暴食などもよくある行動です。
体調面
次に体調面ですが、抑うつ状態や不安が伴うため、そこから来る身体症状がみられます。例えば、抑うつ状態であれば、頭痛、倦怠感、食欲不振、睡眠不足などが挙げられます。極度の不安、緊張から手などの震え、めまい、発汗、吐き気などの症状も出てきます。
体調面での不調、辛さはなかなか他者、特に同様の精神疾患に掛かったことがない人には理解してもらえません。適応障害以外の精神疾患にも言えることですが、うつ病や不安障害などでも非常にしんどい身体的症状が多くあります。
うつ病などの精神疾患などを理由に欠勤したとしても、しっかりとした理解が職場に浸透していなければ、”ずる休み”や”仮病”というレッテルを貼られる可能性もあります。精神的な症状もとてもしんどいですが、実際に体調面で頭痛や倦怠感、肩こり、吐き気などがあれば出勤するのは難しく、仕事にストレスの原因がある場合、出勤しても仕事にはなり得ません。さらに、食欲不振から栄養面でさらに体調不良になったり、不眠から朝起きれない、昼間眠くなるなど生活習慣のバランスも崩れていきます。職場で精神障害等への十分な知識を得るための研修などは大変重要だと考えます。
適応障害の人に向いている仕事
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毎日やることが決まっている同じ仕事
適応障害の影響がある間は無理をするような仕事をすることはお勧めできません。自分の心身の健康を第一に適職につくことを考えましょう。適職とは多くの仕事量や深い人間関係などストレスを抱えるようなことがない仕事といえます。この辺りの判断は通院している専門医にアドバイスを受けるようにします。治ったと思っても再発しやすいのが精神疾患なのです。
できれば、適応障害の診断が出ている間はリハビリも兼ねて、ハローワークや障害者専門の転職エージェントなどで紹介してもらえる障害者雇用枠の職に就くのがよいでしょう。あるいは、いわゆる軽作業のような、比較的誰でもできて、日課の決まっているような仕事を選ぶとストレスがあまりかからないため、適職の一つと言えるでしょう。
職場に馴染む必要がない仕事・一人でもできる仕事
他者との協働やコミュニケーションが必要でないような仕事もあります。自分個人の技量や専門性があればできるエンジニア系やクリエイター、芸術、ものづくりなどです。
これらの仕事は職場の人間関係などのストレスからは解放されます。今までの仕事の経験を活かして、独立開業などができればストレスなく仕事ができます。
在宅勤務が可能な仕事
被雇用者として働く場合も、そうでない場合も昨今はコロナ禍の影響もあり在宅でできる仕事が増えつつあります。在宅でできる仕事は在宅勤務主体で雇用し、交通費などを削減するなどの企業側のメリットもあるようです。今はそういう仕事を得ることができるチャンスと言えます。
パソコンなどの通信機器を利用した在宅ワークも豊富にあり、サイドビジネスとして自宅で取り組む人や、それだけで自立した生活をする人も増えていますので、在宅で仕事するというのは現実味のある選択肢ともいえます。在宅勤務でできる仕事を探してみてはいかがでしょうか。
適応障害の人に向いている職業
適応障害の人に向いている職業として、以下のものが挙げられます。
・事務職
・データ入力
適応障害の治療法
ストレスの原因の除去
適応障害では、うつ病と違い、そのストレスの原因は自覚できる明確なものです。それさえ除去できれば症状は緩和、改善されます。しかし、ストレスの除去の仕方はその人が置かれている状況によっては簡単ではありません。
例えば、生活環境ならば引越しをする、家族や恋人などのプライベートな人間関係ならばその人から離れることは周囲に迷惑をかけることは少ないでしょう。しかし、仕事上のストレスは単純にそのストレスの原因を避けることは職務が遂行できなかったり、会社や同僚へ迷惑をかけることになりかねません。将来、自分の職歴に傷をつけ転職などに不利になる可能性もありますので、無断欠勤や長期の休職、急な退職などには配慮が必要となります。
認知行動療法などの精神療法
上記の様な仕事上のストレスでは、単にストレスの原因を避けることは困難です。そこで、自分のストレスへの対処の仕方、考え方を治療で変えるという方法が有効です。認知行動療法はそのような心理・精神療法の一つで、精神科医や心理療法士などによって行なわれます。カウンセリングを行い、徐々に自分の考え方や行動を変えていくことによって、そのストレスの原因に適切に対処できるようになる治療です。
この治療は効果を発揮するまで一定期間がかかり、即効性のあるものではありません。その人の性格や、抱えている問題によっては効果が薄かったり、長期の治療が必要となります。
また、その人の精神状態や症状によっては、いきなり認知行動療法から入ることはできず、冷静に物事を考えられる状態や医師との信頼関係を築くために指示的精神療法などの段階を経ることもあります。
薬物療法
薬物療法は通常の医療行為としても一般的に行われる治療で、精神医療でも医師の処方により、精神を安定させたり、睡眠を摂りやすくするなど精神疾患のしんどい症状などを緩和させるために使われます。
医師の判断により、使用しないこともありますが、どうしても症状がつらいと感じる場合は相談してみましょう。効果がある薬ほどなんらかの副作用が出る場合もあり、逆に仕事や学業に支障をきたす場合もありますので、用法、用量は厳守する必要があります。
適応障害の対処法
産業医の面談を受ける
産業医は国、企業の責任において従業員の心身の健康を適切に管理するために、労働安全衛生法で50人以上を常時雇用する事業所に選任が義務付けられている医師です。
医師である以外にも、諸条件が定められていて、昨今非常に多い、精神疾患に関しても適切な知識を持っています。プライバシーに十分に配慮したうえで相談に乗ってくれますので、精神科の開業医などを受診する時間がない場合などは会社に産業医がいるか確認し相談をしてみるとよいでしょう。
専門医を訪ねる
専門医とは精神科医や心療内科医を指します。総合病院の場合もあれば開業医もあります。適応障害の様な精神疾患が初めての場合、普段の生活の中でストレスを受けることはよくあることで、その精神的なしんどさや体調不良、普通でない行動などについて自分で精神疾患を疑ったり、場合によっては疑ったり誰かに勧められたりしてもなかなかハードルが高いものです。
しかし、自分だけでストレスを排除しようとしてもいい結果にならなかったり、却って重症化する可能性もあります。産業医やカウンセラーはもちろん、家族や友人などの勧めがあればできるだけ素直に受け入れ、必要であれば付き添ってもらうなどして専門医を訪ねてみましょう。
異動や業務量の調整を申し出る
適応障害と診断されていてもなお、職務上ストレスがある場合は上司や人事担当者に異動や業務量の調整を申し出てみることをお勧めします。自分だけでストレスを回避するような行動は会社や同僚に迷惑を掛ける可能性があります。雇用側には労働者の健康を守るように努める義務があります。日本ではまだまだそのような悩みを会社に打ち明けるような文化が成熟していませんが、国民、労働者の当然の権利と考えてよいのです。
雇用側としても従業員を新しく採用するには多くの手間や準備が要りますので基本的にはなんらかの配慮をしてくれるはずです。逆によい反応がない場合は退職など次のステップを考えるきっかけにもなります。
就労支援機関に相談する
日本では、国民には労働をする権利がありますので、障害があるなしに関わらず、就労支援のサービスを行なう公的機関があります。障害者の就労を支援する機関としては直接障害者用の求人を扱うハローワークは求人の紹介だけでなく職業相談も行っています。独立行政法人高齢者・障害者雇用支援機構が設置、運営する障害者の職業リハビリテーションに関する事業を行なう障害者職業センターはハローワークと密接に連携し、障害者の就労をサポートしてくれます。障害者就業・生活支援センターという機関は障害者の日常生活全般および就労についての支援を行う機関です。
休職を検討する
無理して働きながら通院したり、自分でストレスを解消しようとしても、適応障害の場合はそのストレスの原因が仕事上のものであれば状況の改善は難しく、どのみち、職務も今までどおり果たすこともできません。その場合、休職を視野に入れましょう。
休職は各企業で取得できる期間や条件が違いますので就業規則を確認したり、上司、経理担当者などに詳細を聞いてみましょう。その日、その日の体調や精神状態で欠勤をするよりも労働者本人にも、会社側にもメリットがある選択かもしれません。休職期間が設定されていますので復帰ができそうでもできなくても、指示に従いしっかりと会社に連絡、報告をするようにします。
病気で休業する場合、復職の際には医者の診断書を提出します。復職できるのと、完治は違うことがあります。その場合、復帰後の職務や働き方などについては医師のアドバイスを受け、会社にしっかり相談してみましょう。
転職活動を始める
休職を経ても状況が改善しない、または復職しにくい雰囲気がある、メリットを感じない場合は退職を視野にいれましょう。離職した際は失業保険の手続きをするためにハローワークに行きます。
適応障害が理由で求職活動ができない場合、条件が合えば傷病手当金の申請もできます。登録することで働ける状態であれば自分の条件に合った求人を紹介してもらうことが出来ます。ハローワーク以外にも障害者の転職を支援する公的機関や一般の障害者専門の転職エージェントなどを利用し転職活動を進めていきます。
適応障害のある人が就職・転職をするのにオススメの方法
ハローワークの専門援助窓口の利用
公共の職業紹介をする機関であるハローワークは当然、障害者も利用できます。一般的な感覚ではハローワークを利用しなくても転職活動は問題なくできるケースも多いのですが、障害者専門の窓口がありますので、自分の力だけで活動するよりも、様々な支援を受けることができ、障害者職業センターや障害者就労・生活支援センターなどとも連携するため、自分の力だけで就職・転職活動をするよりも負担が少なく恩恵は大きいと言えます。まず、適応障害がある場合はハローワークに足を運んでみましょう。
障害のある人を対象とした人材紹介会社を利用する
障害のある人を対象に人材紹介をする専門の事業所があります。一般的に障害者専門の転職エージェントなどと呼ばれています。昨今の障害者雇用の機運の高まりから、このようなエージェントも増えており、それぞれに得意分野や、独自の企業とのつながりがあり、非公開の求人なども扱っています。こちらも登録や基本的なサービスは無料となっていますので気軽に登録し、実際に事業所で就職・転職に関するトータルサポートを受けることをお勧めします。適応障害の方を採用した実績のある企業も多数いらっしゃいますので、是非求人を見てみてくださいね。
就労移行支援を利用する
障害者総合支援法下の自立支援給付サービスである就労移行支援事業所は、障害者が一定期間通所し、就労に関するノウハウや就活についての指導、事業所での実習なども行なう心強い通所サービスです。障害者福祉サービスであるため、自立支援給付により原則利用料の1割負担で済みます。本サイトを運営しているatGPでは、障害の症状別に分かれたコースが特徴の就労移行支援事業所を運営しています。
まとめ
今回は適応障害という精神疾患について、そして適応障害がある人に向いている仕事などについて詳しく述べてまいりました。簡潔に整理してみましょう。
適応障害は職場、学校、その他の社会生活をする上で受けるストレスを原因とした、そのストレスに適応できない時に起こる精神、体調、行動面における様々な症状のことです。ストレスを受けるという面ではうつ病や不安障害などと同じような症状を呈しますが、うつ病とはストレスの原因が明確であることや、症状が出る期間などで違いがあります。
対処法としては、ストレスの原因から離れる、原因を除去することが有効ですが、仕事上のストレスへの対処は一方的に行なうのは難しい面もあり、専門医による認知行動療法や薬物による治療が有効です。
適応障害では自分の健康を第一に考え、場合によっては休職や転職を視野に入れる必要があります。
適応障害を抱えての就職・転職では他の精神疾患同様、無理は禁物です。できる限りストレスの少ない仕事、仕事内容や量が適切なもの、そしてストレス源となる他者と協働しなくてもよい仕事が向いています。
就職・転職をする際は公的な支援機関や転職エージェントを最大限に活用に負担を少なくし、成功に導けるようにしましょう。
適応障害を抱えていても、自分の病気を正しく理解し、コントロールできることが大切です。様々な障害者を支援する施策やサービスがありますので、賢く有効利用し、仕事を含めた社会参加を充実したものにしていただけることを願っております。