障害者雇用の離職率はなぜ高い?離職理由と定着率を上げるポイント
更新日:2026年10月01日

障害者雇用率の達成には新規採用も重要ですが、雇用した方の定着率を高めることも欠かせません。離職を防ぐことは採用コストを抑え、安定した障害者雇用を継続するために極めて重要です。なぜ障害者雇用の離職率は高いのでしょうか。離職の主な理由や傾向を事前に把握できれば、企業として適切な対策を立てることができます。そこで本記事では、障害者雇用の離職率が高い理由と主な離職理由を解説し、それらをふまえた「定着率を上げるためのポイント」について詳しく紹介します。
目次
障害者枠の一般企業における定着率の実態
業種別の定着率
まずは、障害者にとって長く働きやすい業種に傾向があるのかを見ていきましょう。
厚生労働省の「障害者雇用の現状等(平成29年)」にある「就職先企業の産業別にみた職場定着率の推移と構成割合」から、働いている障害者数が多い主な産業を抜粋してご紹介します。

データによると、「医療・福祉」と「生活関連サービス・娯楽業」がほぼ同等の高い数値となっており、定着率トップ2と言えます。
全産業の平均定着率は「3か月後:76.5%」「1年後:58.4%」となっており、この平均値をクリアできるかが一つの目安となります。一方、離職率が比較的高い(定着率が低い)業種としては「宿泊・飲食サービス業」や「建設業」が挙げられ、1年後の定着率は50%を切っています。
一般的な平均離職率が約15%前後、高いとされる新卒の「3年以内の離職率」でも約30%であることを考えると、多くの産業で3か月時点で約30%(定着率70%前後)が離職している障害者雇用は、産業を問わず全体的に離職率が高い傾向にあると言えます。
障害の種類別の定着率
次に、障害の種類によって定着率に差があるのかを見ていきましょう。『障害者の就業状況等に関する調査研究』のグラフ「障害者の職場定着率(障害種類別)」によると、1年以内の定着率にはある一定の傾向が見られます。

出典:『障害者の就業状況等に関する調査研究』 (2017年、JEED)
障害種別の就職1年後の定着率を比較すると、発達障害(71.5%)と知的障害(68.0%)が高い一方、身体障害(60.8%)と精神障害(49.3%)は低く、精神障害は約半数が離職する結果となっています。
この差の主な要因は「採用枠」の違いです。知的・発達の約8割が配慮を得やすい「障害者求人」で採用されるのに対し、身体・精神は離職率が極めて高い「一般求人(障害非開示など)」での採用が多く含まれるためです。
実際に「障害者求人」に限定すれば、1年後の定着率は精神(64.2%)・身体(70.4%)を含め全体的に安定した水準となり、適切な配慮と採用枠の選択が定着を大きく左右することが分かります。
企業規模別の定着率の実態
続いて、企業の規模によって定着率にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」
全体的な傾向として、企業規模が小さいほど1年後の職場定着率が低く、離職率が高いことがわかります。特に従業員数50人未満の小企業においては、1年後の職場定着率は46.9%(離職率53.1%)で、半数以上の障害者が離職しているという結果になりました。
大きな企業になるほど定着率は高くなりますが、最も定着率が高い従業員数1,000人以上の大企業においても、1年後の離職率は34.2%(定着率65.8%)と、約3割の障害者が離職しているのが実態です。
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障害者が抱える不満と企業の実態
では、続いて気になる障害者の離職理由についてのアンケート集計を見てみましょう。こちらは「平成25年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省)を参照します。こちらの調査ですが、対象となる障害者に「離職理由(個人的理由)」と「(仕事を続けるうえで)改善が必要な事項」の2つの質問をしていますが、知的障害者はこの質問の対象外となっています。また発達障害者については、障害者雇用促進法に基づき、精神障害者に含まれるものと推察します。
障害者の離職理由の上位
| ● 職場の雰囲気・人間関係(身体・精神)
● 賃金・労働条件が合わない(身体・精神) ● 仕事内容が合わない(身体・精神) ● 疲れやすく体力意欲が続かなかった(精神のみ) ● 症状が悪化(再発)した(精神のみ) ● 作業、能率面で適応できなかった(精神のみ) |
「疲れやすく体力意欲が続かなかった」、「症状が悪化(再発)した」、「作業、能率面で適応できなかった」という理由は精神障害者特有のものと言ってもよく、精神障害者を雇用する場合はこのあたりの配慮を重点的に行うことが定着のポイントになると言えます。
「職場の雰囲気・人間関係」、「賃金・労働条件が合わない」、「仕事内容が合わない」という理由は何も障害者だけではなく一般的に離職理由の上位に上がってくるものです。
これは、障害者はそれぞれの障害特性に合わせた配慮が必要という以外は、仕事や職場に対して持っている要望は他の労働者と変わらないという、あまりにも当然の結果と言えます。
身体障害者の離職理由|労働条件と「バリアフリー・設備面」の配慮不足
障害者職業総合センターの「調査研究報告書No.137」によると、身体障害者の1年後定着率は60.8%にとどまり、約4割が離職しています。主な自己都合離職理由としては、
● 「労働条件が合わない」(約25%)
● 「業務遂行上の課題」(約18%)
が上位を占めています。
身体障害者の場合、車椅子移動や視覚・聴覚支援など、障害特性に合わせた物理的環境の整備が欠かせません。そのため、賃金や時間といった条件面だけでなく、バリアフリー化や補助機器導入などの「設備面の配慮不足」が業務上の支障となり、早期離職につながる傾向にあります。 長期的な定着を果たすには、適切な労働条件の設定と同時に、職場設備の調整が不可欠です。
出典:障害者職業総合センター『調査研究報告書 No.137』
精神障害者の離職理由|人間関係や「体調波・特性」への理解不足
障害者職業総合センターの調査(報告書No.137)によると、精神障害者の1年後の定着率は49.3%と最も低く、約半数が早期離職している実態があります。主な自己都合離職理由としては、
● 「障害や病気のため(体調・症状悪化や疲労)」(約35%)
● 「職場の雰囲気・人間関係」(約20%)
が上位を占めています。
精神や発達の障害は外見から分かりづらいため、「体調の波」やコミュニケーションの特性に対する職場の理解が不足しがちです。その結果、人間関係の摩擦や過度な負担から症状が悪化し、離職につながるケースが多く見られます。定着には周囲の理解と、体調変化に対応できる柔軟なソフト面の配慮が不可欠です。
出典:障害者職業総合センター『調査研究報告書 No.137』
発達障害者の離職理由|人間関係や「労働条件」への柔軟さ不足
障害者職業総合センターの「調査研究報告書No.137」によると、発達障害者の1年後の定着率は71.5%となっています。主な自己都合離職理由としては、
● 「職場の人間関係」(約28%)
● 「業務や労働条件が合わない」(約22%)
が上位を占めています。
発達障害者の場合、曖昧な指示への対応やマルチタスクの調整、対人コミュニケーションにおいて課題が生じやすい特徴があります。そのため、明確な業務指示や適性に応じた作業内容の調整といった柔軟な配慮が不足すると、職場への不適応を起こして離職につながりやすくなります。長期的な定着を果たすには、周囲の特性理解と働きやすさに応じた柔軟な労働条件の設定が不可欠です。
出典:障害者職業総合センター『調査研究報告書 No.137』
改善が必要な事項の上位
| ● 能力に応じた評価、昇進・昇格
● 調子の悪いときに休みを取りやすくする ● コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置 ● 能力が発揮できる仕事への配置 |
こちらは障害者が会社側に求める改善点ですが、こちらも「調子の悪いときに休みを取りやすくする」、「コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置」は障害者特有の要望と言えますが、逆に障害者雇用において十分に配慮すべき点であるのにできていない事業所が多いという結果が浮き彫りになります。
また、「能力に応じた評価、昇進・昇格」、「能力が発揮できる仕事への配置」は障害者でなくても持っている会社側に求める改善点です。
これらの結果からわかることは、障害者の離職の理由は障害者特有の悩みへの配慮が不十分であるということと、誰もが持ち得る待遇、評価、給与面などでの会社への不満に二分されるということです。あくまでも統計上の結果ですが、これが企業側の実態であり、障害者雇用において定着率を上げるためにはこの二点を解決していく必要があります。
【企業の人事担当者編】障害者雇用・職場定着で現場が抱える課題
障害者雇用を進めるうえで、法的雇用の達成だけでなく「いかに職場に定着してもらうか」が多くの企業にとって共通の大きな課題となっています。厚生労働省の「障害者雇用実態調査」などによると、多くの人事担当者が採用や職場定着に関して次のような悩みを抱えています。
| ● 業務切り出しの難しさ (社内に適した仕事があるか分からない)
● ノウハウの不足
● 現場の理解・配慮不足
● 環境・安全面の整備 |
障害者の離職を防ぐには、単に人員を配置するだけでなく、こうした企業側の受け入れ課題の解決が欠かせません。配属部署への特性理解の啓発や適切な業務切り出し、設備やルールの柔軟な調整といった「定着支援」を組織全体で推進していくことが不可欠です。
出典:厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課|令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書
障害者が離職率の高い企業に共通する「形だけの配慮」とは?
障害者の離職率が高い企業には、配慮を行っているつもりでも、現場の実態に伴っていない「形だけの配慮」になっているという共通点があります。制度や設備だけを導入しても、実際の運用が形骸化していると離職を防ぐことはできません。
具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

形だけの配慮から脱却するには、入社時だけでなく「本人との継続的な対話」を通じてニーズを把握し、現場全体で理解を共有しながら柔軟にサポート体制をアップデートしていくことが不可欠です。
障害者枠の定着率を上げるための5つのポイント
採用段階での「専門アセスメント」でミスマッチと早期離職を防ぐ
障害者雇用における早期離職を防ぐには、面接の印象だけで判断せず、採用段階で「専門アセスメント」を活用することが効果的です。精神障害や発達障害などの外見では捉えにくい特性やストレス耐性は、一般的な面接だけでは把握しきれず、入社後のミスマッチにつながる原因となります。
専門アセスメントを取り入れることで、本人の作業能力や体調の波、セルフケア力、真に必要な合理的配慮を客観的に可視化できます。例えばゼネラルパートナーズのような障害種別に特化した支援ノウハウを持つ専門エージェントと連携し、正確な情報をもとに業務切り出しや配慮事項を整えることが、定着率を高める確実な近道となります。
障害者が「辞めずに働きたい」と思う職場環境の3大条件
障害社員の早期離職を防ぐには、「ここで働き続けたい」という継続意欲を高める環境づくりが欠かせません。
障害者職業総合センターの調査(報告書No.176)によると、障害のある社員の就労継続意欲には以下の3つが大きく影響しています。
| ● 適切な「合理的配慮」の実施 ● 信頼できる「仕事の相談先」の存在 ● 「将来への不安」を解消するキャリアビジョン |
マニュアル通りの物理的支援にとどまらず、日々の悩みに寄り添う相談体制や将来のステップアップを見据えたキャリアパスを提示するなど、ソフト面から安心感を育むことが長期定着を実現する鍵となります。
出典:障害者職業総合センター『調査研究報告書 No.176』
戦力化とモチベーションを高める「業務の切り出し」とキャリアパス設計
障害社員の戦力化とモチベーション向上には、適切な「業務の切り出し」と段階的な「キャリアパス設計」が重要です。変化のない単調な作業の繰り返しは意欲低下や離職を招きやすいですが、個々の適性に応じた業務設計を行うことで定着率は大きく高まります(報告書No.176)。

表のように、一般的な事務や清掃作業だけでなく、研究やデータ分析といった専門技術を活かして活躍する事例も多数存在します。本人の強みを見極めて業務を切り出し、経験に応じてステップアップできる明確なキャリアパスを示すことが、社員の成長意欲を引き出し、確実な戦力化を実現する鍵となります。
出典:障害者職業総合センター『調査研究報告書 No.176』
支援機関との連携
障害者の定着率を上げるには、企業単体で抱え込まず、専門機関と連携することが不可欠です。
そもそも障害者雇用は、行政や企業の一方的な努力だけで成立するものではなく、官民が一体となって協力し合うことで成立します。企業側だけで対応できる範囲には限界があり、障害者本人の最善の利益を守るためにも外部機関のサポートを積極的に活用することが求められます。
具体的には、以下のような機関と連携を取ることが定着率向上への重要な鍵となります。
● ハローワーク(公共職業安定所)
求人の掲載だけでなく、企業が求める人材像や必要な合理的配慮、定着に向けたノウハウの相談に対応する最も身近な公的機関です。
● 障害者職業センター
ハローワークと連携し、職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣や、企業の雇用管理に関する専門的な相談・援助を行います。
● 障害者就業・生活支援センター
障害者の就労面だけでなく生活全般の相談に応じる機関であり、企業に対しても職場定着に関する支援・助言を行います。
● 就労移行支援事業所
事業所を経由して採用した場合、その事業所の支援員が入社後も継続して本人と企業の間に立ち、定着に向けたフォローを実施します。
このように、状況や課題に応じて適切な支援機関としっかり連携を取ることが、円滑な職場定着と安定した雇用維持につながります。
障害者の志向も考慮する
障害者も障害があるという以外は他の社員と変わらない一人の人格、人権のある人間なのです。当然、働く目的、ゴールは人それぞれです。
その働く目的は社会の中での居場所づくりであったり、他者との交流であったり、必要最低限の収入が得られることだったりします。その場合、会社の雰囲気や居心地の良さ、障害への十分な配慮などがあれば定着は可能となります。
一方で、働く側のゴールはもっと高い所にある場合もあります。
それは自分の存在や価値を認められたい、正しい評価を受け適切な職務、職位、よりよい給料をもらいたいというゴールです。入社時からそういう高い志向を持つ人もいますし、仕事に慣れて段階的に目標を上げていく人もいます。
一言で”定着”と言っても、それぞれの目標がある以上、それを雇用する側もそれぞれの社員にあった定着に向けた計画と処遇を考える必要があるのではないでしょうか。
障害者雇用の職場定着に成功した企業事例
障害者雇用で高い定着率を実現している企業では、単に雇用枠を埋めるのではなく、採用前から入社後にかけて「個々の特性に合わせた環境整備」を行っています。
高齢・障害・求職者雇用支援機構がまとめたケースブックなどの掲載事例をもとに、企業ごとの具体的な取り組みと効果を表にまとめました。

定着に成功している事例に共通しているのは、「企業側だけで抱え込まず、専門機関や外部のノウハウをフル活用している」点です。
面接時の印象や企業側の思い込みで環境を整えるのではなく、専門エージェントや外部支援機関による客観的な評価・アドバイスを取り入れることが、入社後のミスマッチを防ぎ、長期的な定着と戦力化を実現する確実な近道となります。
障害者雇用の定着率・離職率に関するよくある質問
Q. 障害者雇用の定着率はどのくらいですか?
A. 就職1年後の定着率は平均58.4%です。知的・発達障害は約7割と高い一方、精神障害は約5割と種別で大きな差があります。
Q. 障害者雇用の定着率はどうやって計算するのですか?
A. 「(在籍人数 ÷ 採用人数)× 100(%)」で算出します。採用後3ヶ月や1年など、期間を区切って測定するのが一般的です。
Q. 障害者の早期離職率が高い主な原因は何ですか?
A. 職場の人間関係や雰囲気、業務・労働条件のミスマッチのほか、障害特性や体調に対する合理的配慮の不足が主な原因です。
Q. 企業が障害者雇用で定着しない原因を防ぐには?
A. 専門アセスメントによる採用ミスマッチの防止と、業務の適切な切り出し、支援機関と連携した相談環境の整備が効果的です。
Q. 障害者の平均勤続年数はどのくらいですか?
A. 身体障害者が約10年、知的障害者が約8年と長い一方、精神・発達障害者は約3〜4年と、障害種別により大きな差があります。
まとめ
障害者雇用における定着率は、一般雇用と比較して低い傾向にあります。産業別で見ると「医療・福祉」や「生活関連サービス・娯楽業」では比較的高い一方、「宿泊・飲食サービス業」や「建設業」では1年後の定着率が50%を切るなど、業界ごとの差が見られます。
障害別に定着率を見ると、知的障害、発達障害において比較的高く、身体障害、精神障害において低いことがわかりました。身体障害者と精神障害者は一般求人枠で採用された場合、離職率が高いことが原因になっていました。
障害者の離職理由と会社に求める改善には、大きく分けて2種類あることがわかりました。障害とそれに対する配慮に起因するものと、障害とは関係なく働く側として適切な待遇や評価をして欲しいという国内での一般の就労でも離職理由として上位に上がるものでした。
これらの状況を鑑みて、障害者の定着率を上げるために企業側が取り組むべきこととして①障害者枠での雇用に関してはそれに関連した支援機関と連携をすること②障害者も仕事に対する志向は人それぞれで、安定して働けることを目指す人や、職場で自分の能力を発揮し、正しく評価されたい上昇志向の人が存在し、雇用する側はそれらのニーズにあった定着への計画策定や処遇を行なう必要がある、ということです。
障害者の雇用促進は国の政策であり、雇用率達成は義務と捉えている企業も現状では多いかと思います。しかし実際に雇用率を達成し、定着にも成功している企業は現在の人材不足状況下で活路を見いだしてもいますし、CSRの面でもアピールにも結び付いています。なぜ障害者の離職が多いのか、統計的な分析をおこない、具体的な方策を取ることは会社と働く意欲のある障害者の双方に利益をもたらすのではないでしょうか。
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