「精神障害者は就職できない?」向いている仕事を見つければ大丈夫!
更新日:2022年03月31日
精神障害を抱える人の中には、正規雇用で一般企業へ就職することを諦めている人も多いかもしれません。確かに入院中ではない精神障害者のうち、1.7%程度の人しか一般の企業で正規社員として就業できていないというのが現状です。では、精神障害者が一般の企業で働くことは難しいことなのでしょうか?答えはNOです。働き方にこだわらなければ精神障害者が社会で活躍する場は増えてきており、また2018年に障害者雇用促進法が改正されて、この法律の対象に精神障害が含まれてからは、一般企業に雇用されやすくなってきていることもまた事実です。ここでは、精神障害者が現在置かれている雇用状況について詳しく解説していきます。
目次
精神障害がある人は就職できないのか
精神障害者は就職することが難しいとお考えの方も多いと思います。たしかに精神障害は他の障害と比べて社会の認知度がまだ低く、偏見の目で見られることも多いため、その点では一般の人たちに受け入れてもらうことが難しいこともあるかもしれません。
しかし、精神障害者が一般の企業で働くことは、決して不可能なことではありません。精神障害者が一般の企業で就職するためには、「障害者雇用」の制度を利用するのが近道だと言えます。
また、精神障害者は環境の変化が大きなストレスとなり、体調を崩してしまいがちな人が健常者よりも多い傾向があります。
さらに、今まで働いていなかった精神障害者がいきなり正規雇用としてフルタイムで働き始めるというのは、精神障害者本人にとっても大変な負担になることも多いと思います。
そこで就労移行支援事業所を利用し、心身ともに就労するために必要な健康管理や生活習慣の改善、希望する職種に就くために必要なスキルの習得を行い、就職活動を行うことをお勧めします。
また、障害者雇用専門の転職エージェントを利用することもお勧めです。この障害者雇用専門の転職エージェントは、その人が精神障害によって出来ないことと精神障害があっても出来ることをよく確認・把握し、障害者雇用を希望する企業とのマッチングを行ってくれます。
やみくもに求人に応募するのではなく、このような機関を利用することで、精神障害者が一般の企業に就職しやすくなるのです。
障害者雇用義務化の対象に精神障害者も含まれるようになった
障害者雇用促進法により、企業はその規模に応じて一定の割合の人数の障害者を雇用することが義務付けられています。
以前はその対象となる障害者は、身体障害者と知的障害者に限られていました。こと精神障害に関しては、雇用率に算出することは可能でしたが、対象者として法律には明記されてはいませんでした。
しかし、2018年にこの法律が改正され、精神障害者も障害者雇用促進法の対象と明記されることになり、この年から一般企業における障害者雇用雇用で働いている精神障害者の割合が大きく増えてきています。
また、この法改正に伴い企業や公共団体など公の機関へ求められる障害者の法定雇用率も上がったため、精神障害者はより就職しやすくなっています。
この法定雇用率は5年ごとに見直されるため、今後はさらに精神障害者の企業や国や地方自治体の機関への就職はより促進されていくだろうと考えられます。
では、この法定雇用率を達成できていない企業には、何らかのペナルティーが課されるのでしょうか。
この法定雇用率を達成していない企業は、雇用計画の提出が求められ、さらに未達成分に相当する納付金が徴収されます。
さらに実施勧告に応じず、正当な理由もなく障害者雇用計画を実施しない企業に対しては、企業名が公表されることもあります。
このように、障害者雇用の対象に精神障害者が正式に加えられたこと、法定雇用率が上がったことなどにより、精神障害者は就職しやすくなったと言えます。
就職以外の働き方もある
いくら精神障害者の就職が容易になったとはいえ、その障害の状態や特性により正社員として働くことが難しい人も多くいると思います。
そのため、精神障害者の採用枠や雇用人数自体は増え、実際に正社員として働き始めている人が増えているにもかかわらず、継続して就労を続けることが出来る人は少ないのが現状です。
障害の状況や体調面で不安があっても、働きたいと思う精神障害者も多いと思いますが、職場に定着して安定した収入を得ることが出来なければ、苦労して就職活動を行う意味がありません。
そのような正社員としての就業が難しい精神障害の人は、他の働き方を考える必要があります。
そこでお勧めなのが、パートやアルバイトといった非正規での働き方です。パートやアルバイトは、正社員に比べて賃金は低いのですが、その分大きな責任を負わなくて済むため心身にかかる負担は格段に少なくなります。
また、一般企業への就業が難しい人のために就労継続支援A型事業所で働きながら賃金を得るという方法もあります。
パートやアルバイトに関しては馴染みがある精神障害者が多いと思いますが、就労継続支援A型についてはあまり知らない人もいらっしゃるでしょう。
就労継続支援A型とは、障害や難病のある人が就労継続支援A型事業所と呼ばれる福祉事業所と雇用契約を結び、一定の支援を受けながら働くことが出来る福祉サービスのことを言います。
雇用契約を結ぶわけですから、当然最低賃金かそれ以上の賃金を得ることが可能です。
このように、正社員にならなくても、働いて賃金を得る方法はあります。
正社員として働く場合には、賃金や福利厚生など魅力的な点も多いのですが、労働時間や責任の重さなどに耐えることが難しい精神障害の人も少なくありません。
精神障害の人のなかには季節や環境の変化により、体調を崩しやすいといった特徴があり、どうしても欠勤が多くなってしまいがちです。
また、フルタイムで働くことにより心身に大きな負担を感じる人もいます。
そのような場合は、正社員としての就労にこだわらずに、パートやアルバイト、就労継続支援A型での就労から始めることを検討してみてはいかがでしょうか。
なお、パートやアルバイト、就労継続支援A型での就労でも、決まった時間に決まった職場へ出勤する必要があります。この「出勤する」ことが難しい人や、人とのかかわりが苦手な精神障害者もいます。
そのような人には「在宅ワーク」がお勧めです。在宅ワークであれば出勤の必要はなく、自分の体調や生活リズムに合わせた働き方ができるからです。
このように働き方が多様化している現代において、無理に正社員を目指すのではなく、自分に合った働き方を見つけることが、精神障害者の社会参加の方法の一つであるといえるでしょう。
精神障害の方におススメの仕事
精神障害の人が仕事を探す場合には、自分の障害特性上、無理のない仕事を選ぶ必要があります。
精神障害は、その人の精神状態が仕事に大きく影響を及ぼすため、自身の精神障害の症状や疾病に応じた勤務時間や業務量、ストレスの程度を考えた仕事選びをしなければなりません。
そのため、自分の精神障害の状態をしっかり把握してから仕事を選ぶようにしましょう。
一般的に統合失調症、うつ病、双極性障害(躁うつ病)の人は、マルチタスク能力が求められる仕事は向いていないと言われています。
また幻聴や妄想による独り言や、無感情になってしまうといった症状を抱える人も少なくありません。
そのため、一人で黙々とマイペースで続けることができ、集団行動を必要としない仕事が向いているといわれています。
これらの精神障害は、「うつ」の症状が出ることもあるため、ノルマがない、あるいは締め切りが比較的緩やかで自分を追い詰める必要がない仕事が向いています。
具体的には軽作業、バックヤード業務、事務、経理、システムエンジニア、農業、清掃員などです。
また、てんかん症状を持っている人は、急な発作が起こる可能性もあるため、作業が一時的に中断・延期しても問題がない仕事が向いています。
さらにてんかんは、音や光に反応して発作が起こることもあるため、一人で行える仕事や静かな環境で行うことが出来る仕事が向いているといえます。
具体的には、事務、システムエンジニア、Webデザイナー、ピッキングや仕分け、清掃、クラウドソーシングなどです。また、在宅でできる仕事も選択肢の一つに加えることができるでしょう。
発達障害の人は、人とのコミュニケーションや協調性が苦手な人が多いため、販売や営業などの仕事が向ていないケースがあります。
また、よく確認せずに衝動的に行動してしまうこともあるため、あまり人と関わる必要がない職業が向いています。
発達障害の人は、一つのことに強いこだわりを持つという特性を持っているため、興味がある分野に関しては強い集中力を発揮し、大きな成果をあげることができることもあります。
そのためプログラマー、執筆、校正、校閲、デザイナー、アーティスト、CADオペレーターなどが向いていると言われています。
しかし、発達障害の人はまず一番に「その分野に興味があるかどうか」といったことが問題になるため、仕事内容よりも自分に興味がある業界の仕事かどうかという点に重きをおいて仕事を探したほうが良い場合もあります。
発達障害の人に向いている仕事については、別途発達障害だけを取り上げた記事がありますのでそちらもご参照ください。
■参考記事
atGP(アットジーピー)とは?
atGP(アットジーピー)とは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する各種障害者就職および転職支援サービスの総合ブランドです。
20年以上障害者の就職や転職の支援を行ってきた日本の障害者雇用のパイオニアともいえる存在が、このatGPです。
atGPの就職や転職に関するサービスは、基本的に無料で受けることができます。
障害や難病のある方に将来のビジョンも含めて、ひとりひとり異なる不安や悩みに関して専属のエージェントが二人三脚で寄り添い、サポートを行います。
精神障害のある方が就職や転職をしたいと思った際にには、atGPに相談することをおすすめします。
まとめ
ここまで、精神障害の人の働き方や障害者雇用促進法が精神障害者の就職にどのように影響しているか、精神障害の人に向いている仕事について解説してきました。
精神障害者は障害者雇用促進法の改正により就職が容易になり、また働き方にも多くの選択肢があることがお分かりいただけたと思います。
精神障害者が社会で活躍するためには、自分に合った職業を選ぶことも大切ですが、障害の程度や症状によってはパートやアルバイト、就労継続支援A型といった働き方も視野に入れておくことも考えておきましょう。
このような正社員以外の働き方をステップとして徐々に無理ないペースで正社員を目指したり、周囲の支援を得ながら賃金を得て生活していくことも立派な自立した働き方の一つです。
精神障害であっても、多様な働き方が出来るため、自分に合った職種や働き方を選び、マイペースで社会参加を目指してみてはいかがでしょうか。